第1章 終と初

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薄暗い路地裏を月が照らす、木は倒れ民家は半壊、まるでこの地域だけ台風に遭ったかのようだ。 「この世界は力が全てだ。」 大柄な男は一言呟くと近くに停めてあったバスにおもむろに右手をのばし軽々持ち上げる。 「何いっちゃってんだよこのおっさんは 酔っぱらい? ってまぢかよ………」 目の前で常識ではありえない光景を目撃してしまったのは齢15、16、漆黒に染まり逆だっている髪をなびかせている少年だ。 当然その少年は驚きを隠しきれない様子で我が目を疑っているようだ。 我に返り冷静に思考を働かせ危険を察知した少年は迷うことなく踵を返し大柄の男から距離をとる。 いや、正確には逃げ出したと言った方が正しいだろう。 大柄の男は冷静に走り去っていく少年の後ろ姿を見つめがら口にする。 「お前は逃げることはできない 黒川 誓治………。」
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