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厳しい厳しい、夏大へ向けての練習が始まる。
去年の夏は、三神やみんなのおかげで東東京大会3回戦まで戦った。
俺は、というと、本当に何もできなかったのを憶えてる。
それだけは確かだった。エースとして、情けないばかりだった。
でも、今年は違う。変わるんだ。
吉川さんからのコーチング。
俺は出会ってしまったから、吉川亜澄に。
「おい! 安達。ニヤけてないで早くこの問題解け」
「は~い」
6時間目の午後のこと。
本格的に授業も始まりだす、4月2週目のこと。
ま、学校の授業なんてただのオマケみたいなもんさ。
勉強なんて、やろうと思えばできるし。
机に広げられたノートに、びっしりメモが書かれたのを見れば、別に俺が授業放棄してるとは先生も思わないだろう。
そんなんことより、早く野球がしたい!
このウズウズする感覚!
吉川さんの華麗なる投球を見たい!
もう少し。あと5分。
俺は黒板ではなく、その上に引っ掛けられている時計と、机からにらめっこしていた。
不運なことに、出席番号順である今の席は、一番前なのだ。
でも時計が見やすいという意味では、運がいいのかもしれない。
俺のはやる気持ちなど知らず、マイペースに進む秒針。
同じくマイペースに喋り続ける教師。
しかし、そう焦らされるのも、あと3分だ。
「はいじゃあ今日の授業はここまで。キリがわるいから、ちょっと早く終わるね」
きたぁ! やっと終わった!
やっぱり運がいいぞ!
長い長い、学校!
ついに放課後ですよ!
さっと、いつものようにスムーズに机の中に教科書をぶち込み、ノートだけカバンに入れる。
ノートは一応見返す。
同じクラスの三神と、そして渡会の元へ走る。
「三神! 渡会! グラウンドいこうぜ!」
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