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「涼介~!一緒に次の授業サボろうぜェ~!」
ある日、2時間目の古典の授業が終わった直後。
黒板に書かれた文字をノートを必死に書き写していた俺の耳に、やたらと通る大声が聞こえてきた。
こんな風に間延びした馬鹿っぽい話し方をする奴には心当たりがある。
だが……聞き間違いだと思いたい。
俺は知らん。
クラス中に響き渡る大声でサボりの勧誘をしてくるような馬鹿は。
「涼介、呼ばれてるぞ!」
無視して板書し続けていると、親友の大翔がわざわざこっちにやって来て俺の肩を揺らした。
大翔は不思議な紅茶色の髪と目をした、俺の想い人……だった相手。
ついこないだ正式に振られたんだがな。
引きずってないといえば嘘になるけど、こいつとは親友でいるって決めたんだ。
「あんな馬鹿はほっとけばいいんだよ」
「何言ってんだよ。可哀相だろ!」
可哀相……?
ふざけてるのかと思いきや、大翔は大真面目な顔。
大翔の奴、情が深いからすぐ他人に優しくするんだから……。
それが長所でもあるんだけど、何もあの馬鹿にまで気を遣ってやらなくてもいいのに。
「あれが可哀相ってか?ありえねぇだろ……」
チラッと横目を向けると、教室の入口に立ってる黒い物体が目に入った。
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