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「あー疲れた!お前絶対後で呼び出しくらうんじゃねぇの?」
抜けるような青い空の下、屋上に着いた俺たちは床に向かい合わせで座り込んだ。
「い~の。チャイム鳴ったんだし平気。つか、迎えに来てくれてまじ嬉しかった」
「はいはい」
悠のせいで走り疲れたし、ますます腹減った。
今にも抱き着いてきそうな悠を受け流して、さっさと持って来た弁当を広げる。
「美味そ~ッ!涼介のママさん、料理上手いんだな」
「いや……これ俺が作ったやつ」
中学生の弟のぶんも含めて、毎朝弁当は俺が作ってるんだよな。
フルタイムで働いてる母さんの負担をちょっとでも減らしてやりたいし。
「ぇぇ?!これを、涼介が……?!」
「だからそう言ってんだろ」
よだれ垂らしそうな顔で悠が見つめる弁当の中身は、卵焼きにウインナー、野菜炒めに、ノリをのっけた白ご飯。
時間なくても作れるごく普通の質素な弁当にすぎない。
たいしたもん入ってないのに、大袈裟に驚きすぎだろ。
「いいな~……俺、弁当なんて作ってもらったことねぇや」
ふと悠が見せた寂しげな表情。
こいつの笑顔以外の表情を初めて見た気がする。
だから余計に衝撃だった。
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