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純のその言葉を聞くと優香は、箸を止め、少し俯いたまま
「純さん……その話は、もう……」
そう言った。
純はハッした様子で優香を一瞬見ると、ワインのボトルを手に取り優香のグラスにワインを注いだ後、自分のグラスにもワインを注いだ。そして、ワインのグラスを斜めにして少し回すように振り、グラスの中で揺れるワインを見ながら言った。
「そうね……今となっては、どうでも良い事だものね……」
優香は、その言葉を聞くと止めていた箸を動かして、ほうれん草のおひたしを摘み、口に入れた。
純はその後暫く、グラスを見つめていたが、思い立った様にワインを少し多めに飲み込むと、せっせとほうれん草を口に運ぶ優香に聞いた。
「でもさ……そろそろ考えても良い頃じゃない?」
そう訊かれた優香は、口に運んだばかりの箸を口に咥えたまま純を見て、首を傾げた。そんな優香に純は溜息を吐いた後で言った。
「だから、お金返し終わった後の事!どうするの?風俗続けるの?」
そう訊かれた優香は、驚いた様な顔で純を見た後でほうれん草を喉に詰まらせたのか、咳き込んだ。そして耐え切れなかったのかグラスのワインを流し込むように飲むと、更に咳き込んだ。
純は、そんな優香の背中を擦ってあげていた。
優香は咳が少し収まると、時々、咳き込みながら言った。
「すいません。急にそんな事聞かれたから……今までそんな事考えたこと無かったから、なんかビックリしちゃって」
純は、それを聞くと優香のグラスにワインをゆっくり注いでから優香に言った。
「ねぇ……お金のこと終わったら……良かったらウチで働かない!?岡崎君には、私から話しするし……」
純がそう言うと、長い沈黙が流れた。優香は少し俯きながら考えた後、ワインを一口飲んでから答えた。
「純さんの気持ちは凄く嬉しいです……だけど、今はお金を返すことしか考えられないし……それに……岡崎さんの所以外で働くなんて想像も出来ないんです……今の私には、お金の事と、岡崎さんしかないから……だから……その後の事は、終わった後に考えさせて下さい!今は今の事だけ考えていたいんです……」
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