序章

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優香はそう言った後、少し気まずそうに純を見た。 純は、そんな優香に微笑むと 「そう……じゃあこの話しはこれでおしまい!優香ちゃん!そんな辛気臭い話しした訳じゃないんだから、そんな顔で見ないで!」 そう言ってクスクス笑った。 純はグラスに残ったワインを飲み干すと、また、ワインをグラスに注いだ。  純がふとカウンターの上を見渡すと、カウンターに置かれた優香の携帯電話が目に入った。 優香の携帯電話には、ストラップ代わりに妙に年季が入って少し汚れた、赤いお守り袋が付けられていた。純は興味をそそられたらしく優香に聞いた。 「あれ?このお守りいつ買ったの?」 そうきかれた優香は、キョトンとした様子で答えた。 「ずっと前から付けてますよ?」 「あれ?そうだっけ?気づかなかったわ……」 純はそう言うと少し意地悪な感じで、優香に聞いた。 「珍しいわね……優香ちゃんがこういうの持ち歩くなんて……もしかして、岡崎君に貰ったの!?」 意表を衝かれた様に、優香はキョトンとした顔をした後、少し拗ねた顔をして答えた。 「違いますよぉ~!それに中身はお札じゃないですよ!」 「ふう~ん……」純は意地悪そうな顔で言うと、少し考えた後、優香の顔を見ながら聞いた。 「ねえ、中身は何が入ってるの!?」 そう聞かれた優香は、少し考えた後、普段、純の前でも滅多に見せない満面の笑みで 「う~ん……世界を滅ぼす究極兵器……かな?」 そう言ってクスクス笑った。 それを聞いた純はキョトンとした顔で 「なにそれ?」 そう言って首を傾げてから、優香の顔をまじまじ見ると 「やっぱり優香ちゃん……何か良い事あったでしょ!?」 そう言って更に優香の顔をまじまじと見た。すると今度は、優香がキョトンとした顔で、首を傾げた。 そんな優香を見て、純は一つ溜息を吐くと 「まぁいいわ……」 そう呟いた。 それからまた、ワインのボトルを持ち、優香のグラスにワインを注いだ後、自分のグラスにもワインを注いだ。すると、丁度良くワインのボトルが空になった。
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