慰安旅行

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ぞろぞろと団体で改札を出てホテル行きのバスに乗り換える為に駐車場へと向かった。 8月の土曜日だけあって駅は海に行く人で混んでいるが、背の高いバスケ部員達がいるので見失う事なく恵達は後の方でついていく。 客待ちタクシーが多く並ぶ中、なんだか見覚えのある黒い車が目に入った。 恵は立ち止ると陸も気づき立ち止る。 まさかと二人で見ていると後部座席のドアが開き、和香が現れた。 「恵ちゃんっ!」和香は軽やかな足取りで恵の前に立つ。 「どうしたんですかっ!?」 「追っかけてきたの」 一枚の大きな黒い紙をクシュクシュにして体に巻きつけたようなワンピースに、肘丈の長い黒の手袋をつけ、真っ赤なニーハイブーツを履いていた。 そして金髪ボブのウィッグの上には50センチくらいの大きさの蝶が日よけ帽子の代わりのようについている。 「私も海に行きたいって思ったの」和香は大きな瞳をキラキラさせて恵を見つめた。
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