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「おかえりなさい!」 「ん、ただいま」 「上着と鞄預かります」 やっと帰ってきた。 俺の大切な、"きょおさん"。 すごく疲れた顔をして、俺に鞄と脱いだジャケットを渡す。 電気もつけてなかった薄暗いリビングに京さんの背中が見える。 「すぐ飯作りますね!!」 「なぁ、るき」 「はい?」 「こんな暗い部屋で何してたん」 え? ………………え? 「僕んこと、待ってたんか?」 「そ、ですけど…」 なにか良からぬ事を本能的に感じて、京さんのジャケットを握りしめた。 「どうしたんで、すか…」 何かが伝えられるのか、 京さんの異変にこの言葉を出さずにはいられなかった。 なんもないで、って笑って言うからなんだかもうどうでもよくなっちゃいそうで…。 ジャケットをハンガーに掛けた。 「今日、どしたんやろな。天気おもくそ悪い」 僕の頭ん中みたいに暗いなって聞こえた気がしたけど、聞いちゃいけない気がした。 「…まだ5時なのに、暗すぎですよね」 「せやな」 「夕飯用意しますね。何が食べたいですか?」 「久しぶりにるきの和食食わしてくれ」 あまりにも優しい瞳と暖かい掌が俺の頭を撫でたから、この人がいとおしいと感じた。 「じゃあ俺、夕飯の買い物行ってきます」 「僕も行くわ」 「いいんですか?」 「暗いし危ないやろ」 さっきハンガーに掛けたジャケットを京さんに手渡して、財布とケータイをポケットに突っ込んだ。
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