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「何を呆けている?貴様には、そんな時間は惜しいはずだ。」
拳を俺の胸に“ポン”と軽く叩き、笑顔で真っ直ぐと俺を見る彼女は、月並みだけどまるで天使みたいだった。
だけど、その笑顔の理由が、俺にはわからなかった。
…
「大丈夫だったか?」
グラウンドでは、守備位置についてノックの練習が始まっていて、マウンドの裏から出てきた俺を心配そうに、俺より少し背の高い人が駆け寄ってきた。
「大丈夫っすよ。あびるが、またなんとかしてくれましたから。」
「そうか。困ったものだな。睦先輩たちにも。」
少しずれた眼鏡をあげる仕草をしながら、ため息をつくこの人は、俺の一個上の先輩になる坂木 塔矢(さかき とうや)くんだ。
背番号四番を背負い、ポジションはキャッチャー。背番号をみてわかる通り、スタメンで、この高校ナインでは、一番野球がうまい。
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