Ash like snow

2/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
俺の目の前はただ赤かった。 炎の色。血の色。 空すら赤く染まっていて、漠然と喪失感が、俺の体を脱力させる原因になっている。 全て失った。 愛しい人。家族。仲間…。 俺の大切だと思える人間は、この小さい研究所の中にしかなかった。 「あははっ!きぃんもちいい!!」 俺の呆然とする姿をあざけ笑うような声が狭い空間に広がる。 「マシュぅ…。貴様ぁ!!」 俺の大事なもの、全て奪ったものが、眼前にいる。 もはや、憎む対象と成り果てたそれは、歓喜の表情を張り付けたような仮面をしていた。 その仮面は赤い血をすい、とても不気味に笑っている。 「やだなぁ。マシューなんて、人間だった頃のダサい名前で呼ぶのはやめてよ。」 その変わり果てた人ならざる姿をした物体から、聞きなれた声を放つ。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!