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「愛してるよ。」
僕が再三狼狽しながら告げる最後の呪文は決まった五文字、愛おしき五文字の羅列、二人の暗澹たる未来を暗示する五文字_きっとこれぞ狂気なのでせう。
決して光の差し込まない此の部屋にも、決して正常とは云えない僕等の愛も、正義と云う暴力を振り翳して迫ってくる白昼のヒカリに依って自然界に生を営む脆弱な生物である以上蹂躙を_つまり僕等と彼等は俗世に実態を持たぬが故に寧ろ陰としてその存在を強調されてしまうのです。
少し余談が過ぎましたが饒舌がこの僕を癒やしてくれる唯一の特効薬なのです、
狂った人間だと僕を侮蔑して止まないあの恐ろしく画一な眼球をした下界での同類である人間とか云う生物は、あの工場生産された金の付加価値すら持たぬ物体を纏って、果たしてその心の奥さえも均一化された概念を有しているのですか、だとしたら僕には余りに滑稽な猿芝居にしか思えぬのですが。
いいえ僕が異端児なのです。
この空虚さ希薄さは僕が生を受けて有した最初の感情なので愛おしさすら覚えますがこの歪んだ衝動の中枢に在るのは注射器を片手に恍惚の表情で喘いでいる我が最愛の恋人幽妃なのです。
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