環状線

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決まって彼女が蝋の様に透き通った肌に掛かる艶やかな髪を弄びながら僕を試す様に懇願するのは午前二時。 「ねぇ、ならその美学とやらを見せて貰おうじゃないの_ 美しく散りたいの」 彼女が興奮の冷めやらぬ口調であるのは薬物の余韻だからで、あの僕には理解の及ばない特有の絶頂感に酔いしれているからで、素面になった彼女は何時も美しき心中の一歩手前で必ず死の恐怖に脅えて僕を優しい声音で引き止めるのですが僕はあの時の彼女の伏し目がちな視線が好きなのです_あの一瞬こそが僕の生存の価値です。終始僕を詰る彼女の不快そうな眦も狂おしくて好きなのですが、僕に絶対的な支配権を委ねてくる彼女が酷く脆く感じられるのです。僕はその一瞬の為に車を出します_僕達は如何ともし難い退廃的堕落人間で、常時彼女は薬に溺れ僕は遺産を食い潰しごく偶に学問の深遠について語り合って飽き飽きしたら肌を重ねるのです。 何と云う堕落堕落堕落。 此の儘どうか狂った美しい物達と一緒に堕ちて逝けたらいいなと_本気で思うのです、此の僕は。 「幽妃、喜んで。」
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