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誰一人、干渉するものはいない。
「解ったか、若造。ほんまもんのヤクザなめたら、こうなんねんじゃ」
眉無し男がその場をさろうとすると、疼くまっていたハタオが呻き声をあげ立ち上がった。
「待てやー。これで傷害罪成立やな。周りには、いっぱい目撃者もおる。逃げても捕まるて」
「ワレーまだそんな能書きたれるんかい。
一回ブッ殺したろか」
眉無し男も、あとには引けなくなったみたいで、凄い形相で睨み、懐から短刀を取り出した。
しかしハタオは平然とし、喋りまくった。
「俺を殺すつもりやな。
やれるもんならやってみいちゅうねん。刑法第199条の殺人罪やで。
この状況でおまえが俺を刺し、俺が殺され、おまえは自首する。
としても、まあ、6、7年はうたれるわな。喧嘩の上で刺してもうたってことやからな。まだましやわ。
これが逃げてみい。ムショ暮らしは、グッと長なるでえ。
そのうえ、殺した俺を車のトランクに乗せ、コンクリート詰めして、海にでも沈めてみーや。
こりゃー無期懲役はまぬがれんやろなあ。
血も涙もない卑劣な犯行、酌量の余地なしっちゅうわけや。
逃げ切れへんて。捕まるようになってんねん。
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