訴えるYAKUZA

5/6
前へ
/6ページ
次へ
あ、そうや、知ってるか? 刑法にはなあ、無期刑なら10年で、有期刑なら刑期の三分の一で仮出獄できるっちゅーのがあんねん。とはいっても、実際それでは出てこれん。現実は有期刑やと刑期の三分の二くらいで、無期刑やと20年前後は勤めんと出られへん。しかも模範囚となって認められたらっちゅーことやさかいなあ。 ま、わしらヤクザ者が、模範囚で早く出所するっちゅーのは、ちと、恥ずかしいわな。やっぱ、ヤクザは満期でナンボよのう。 それに組は 面倒、見てくれへんやろう。逆に迷惑がられるんちがうか。 そう考えると、ええことまったくあらへんて。 どないや、それでもやるつもりか。 俺は別にかまへんで」 ハタオの力説を聞いていた眉無し男は 「言いたいことはそれだけかい。もうどうでもええ。ただ、あとにはひけんのや」 と真顔で言い 「グサッ」 と短刀でハタオの脇腹を刺し、そして 「バカヤロー」 と叫んで、あたふた逃げて行った。 「あ、いて、このヤロ、刺しやがった」 ハタオは脇腹に、めり込んでいるナイフに手をやった。 温かい血がにじんで来た。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加