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「でも」
不敵な笑みを携えたユアに反撃される。
その視線は俺の……手を取る逆の手に装備した“それ”を通り、腰元へと移る。
「肝心の騎士様が、剣も装備できない、“盾”だけの中途半端な騎士様なんて……何か、格好がつかないわよねぇ」
「ぐぁ」
痛いところを突かれ、俺は反論する余地を失ってしまう。
確かに俺は剣を装備していない。
腰元には剣帯があるにはあるのだが、鞘が腰で揺れることもない。
要は丸腰なのだ。
しかし、左手には盾が装備されている。……俺が装備できるただ一つの“武器”だ。
防具ではない。俺にとって盾は武器なのだ。
それが俺……来嶋修斗、プレイヤー名『アズ』の《剣士?》という職業のキャパシティの限界でもある。
「わっ」
そうしていると、空から響く始まりの福音が一際大きい音を鳴らした。
その瞬間、呼び出してもいないウィンドウが目の前に現れた。
ウィンドウは言わばメニュー画面だ。透明なタッチパネルが宙に浮かんで眼前にあると思ってくれれば遜色はない。
「『アースガルドオンラインの世界に住みますか?』……って、何だこれ。しかも、イエスかノーの二択だし」
共有ウィンドウなら別だが、個人ウィンドウは基本的にその人にしか見ることはできない。
だから、他のプレイヤーは知らないが、俺のウィンドウには口に出した通りのことが書かれている。
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