プロローグ

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俺は今、大変珍妙な状況下に置かれている。 何から説明すればいいのか皆目見当も付かないが、端的に現状を述べると、 女の子二人に拉致られそうである。 ……いや、マジで。 そのうち一人は知っている、というか幼なじみだったのだが……“だった”というと今は違うのか?と聞かれたら、同じだけど違うとしか答えようが無い。 意味分からん?俺が聞きたいくらいだ。その幼なじみは端正な顔立ちで頭脳明晰で運動神経も良いという絵に描いたような学校のアイドル的存在である。 俺はついさっきまでその娘とフヒヒな関係になりそうだったんだが、今やそんなことは瑣末な事。 彼女は華奢だ。二の腕も男が握れば折れてしまいそうな位に細い。 俺がこんな説明をするのは腕に属性があるからとかそんなんではなく…… 彼女は俺を片手一本で持ち上げているのだ…。 くの字、この場合はへの字っていった方が適当かもしれないが、折れ曲がった俺の体の腹の部分に腕を通し、そのまま持ち上げている。 おいおい、華奢っていう設定はどうしたんだ?って聞きたくなるようなゴリラの所業を軽々やってのける幼なじみ。その顔はとても綺麗な、ただし不敵な笑みを浮かべていた。 男の私と致しましては、こんな羞恥心を呼び起こすような体勢は即座に止めていただきたいのだが、いかんせん体が動かない。いや、こんな事を望んでいるわけでは無いよ?そんな特殊性向はありませんから。 体が動かない原因というのが、恐らく目の前にいるもう一人の見知らぬ少女。歳は俺が手を出したら豚箱に連れていかれること請け合いの、中学生位の年齢に見える。 その少女が俺に何をしたのか分からない。分からないが、人差し指をこちらに向けて来たと認識して―――倒れた。体の自由をそっくりそのまま奪われたかのように、マペットの糸を全て断ち切ったかのように。 しかし地に伏す寸前幼なじみが俺を抱え留め、そして今の状況。 俺が動けない理由はこんな感じだ。 そして拉致られそうというのは…… 俺の体の自由を奪った少女が手をかざした先に、何やら空間の断裂が発生していて……二人の会話を聞いているとどうやら俺をその中に連れていこうとしているらしい。 …………どうしてこうなった? 事の発端は昨日の昼に遡る。
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