第二夜 物にまつわる11の話

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「箱」 さて、前述した鬼ごっこの彼は霊感が強いのだという。 私はそういう事は無関心なので、ほとんど信じていなかった。やはり名前がないと不自由なので仮に吉田君としておこう。彼の実家には昔から小さな箱があるのだという。箱と言えば聞こえはいいが子どもの棺桶だよと彼は言った。 「なんでそんなものがあるのだ」と聞くと、いやひいじいさんの頃からあるらしくて、昔はムラで子どもがよく死んだのだという。 それで身代わり人形のようにわざと子どもの棺桶を置いて、 「うちはもう子どもの死人がいますよ」という証拠のようにし、死神を寄せ付けないようにしたのだという。 ある日、棺桶のある部屋に供え物をおきに言った時、 「その箱から手が出てきて手招きしたんだ。僕に」 彼が私に語ってくれた話の一つである。
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