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まずい事になった。
私が室長からその事を聞かされたのは昨日の事だった。
「赤坂君は雛見沢の事に詳しいそうだね」
「はい。この前の有給の時も足を運びました」
「そうか……では単刀直入に言おう」
その室長の言葉で部屋の空気が重くなるのを感じた。
「君は……雛見沢症候群については知っているかね?」
私は正直に答えるかどうか迷った。だが室長が個人的に私と話をするという事は何か大事な話があるという事だ。
嘘をついたせいで本当の事を話してもらえなくなったりすると困るので、正直に知っている事を告げた。
「やはり知っていたか……。ならば虚構橋事件の事は知っているかね」
「はい。あまり詳しくは知らないんですが中国と日本で行われた戦争の発端となった事件で今もどちらが先に攻撃したのか論争が行われているとか……」
「十分だ。ではその現場にいた日本人兵士の一人に雛見沢出身者がいたとするとどう考えられると思う?」
そう言われた途端私は一つの可能性にたどり着いてしまった。
その推測が間違えである事を願って私は質問する。
「ま……まさかその兵士が疑心暗鬼になって中国兵に撃ってしまったというんですか?」
「それが真実かどうかはわからんがその可能性もあるという事だ。そして何故私が今こんな話をしたかわかるか?」
私はそう言われあらゆる可能性を模索するが一つも考えが浮かばなかった。いかんせん情報が少なすぎるのだ。
「実は先週中国の外交官が極秘で日本に来ていたんだ。来た目的は日本とより交流を深めるというものだったんだが、何故か帰国する前に日本を観光すると言い出したそうだ。そして向かった先は雛見沢の入江診療所だったんだ」
私はそれを聞いて驚愕する。
もし室長の話が本当なら……それは……
「そう……中国は何らかの手段で雛見沢症候群の情報を得たんだ。中国の本当の目的は日本と交流を深める事なんかじゃない。雛見沢症候群の有無を確かめる事だったんだ!」
「――それでどうなったんですか!」
私は思わず席から立ち上がり室長に答えを聞こうとした。
「もちろん村の人々はあの事件に関わったごく一部を除いて雛見沢症候群の存在すら知らない。それにいくらいきなり押しかけられたとはいっても相手も強引な行動には出れるはずもなかったから諦めて帰って行ったそうだ」
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