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「でもそれでは終わらなかった。つい先ほど中国が雛見沢症候群の存在を公にした。ご大層に雛見沢症候群の研究記録と一緒にな」 「――そんなばかな! 入江診療所は研究の機密を守るために最善の注意を払っていたはずです。そんな簡単に情報が漏れるはずが!」 だがそこで私は違和感を感じた。あの事件で戦った山狗という組織は何のために雛見沢にいたのかと。そしてその答えは室長の言葉で明かされる事となった。 「君も知っての通りあの事件で第733部隊……通称山狗が反乱行為で処罰を受けた。その山狗が入江診療所で行っていた任務は機密保持だった。そして山狗がいなくなった今、雛見沢症候群という機密は外壁を破られた城と同じなんだよ」 そうだった……私は室長の言葉を聞いて以前富竹さんから聞いた言葉を思い出していた。 「山狗が機密保持の為の部隊だとすれば番犬は戦闘に特化した部隊だよ」 つまり機密保持の役割を担っていた山狗がいない今の状態で機密が漏れてもおかしくはないという事か」 「けれど……スタッフがいる以上研究資料を持ち出したりは不可能の筈では?」 「その意見はもっともだ。私もそう上層部に問いつめたんだが上層部の見解によると入江診療所に内通者がいるらしい」 「入江診療所のスタッフが中国に研究資料をリークした!? それが事実なら中国は……!?」 「ああ……確実に虚構橋事件の原因はこれだと確信しているだろうな。中国は前々から日本を狙う機会を虎視眈々と伺っていた。そしてこれでやっと大義名分ができたわけだ」 私は次々と室長から知らされる事実に頭がオーバーヒート寸前になっていた。 「ま……まさか戦争が起きるという事ですか?」 「ああ……そのまさかだ。今上層部が必死に食い止めようとしているが……恐らく時間稼ぎにすらならないだろうな。いいか? 絶対にこの情報を漏らすんじゃないぞ? 例え君の信頼できる人間でも、家族でもだ! いいな!」 「はい!」 これは大変な事になる。私の頭の中では既に警鐘が鳴り響いていた。
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