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気配に気付き横を見ると階段に腰をかける女がいた
体に合わないサイズの服を着て
余っている袖をヒラヒラと
まるで俺に手を振ってるような…
「…」
よくみたら昼間の女だった
「昼間はご迷惑をかけました」
「…お前、いつから居たんだ」
「あなたがタバコを吸いに出てくる前からです」
気づかなかった
それより…
こんな寒い夜に
一体何をやってるんだこの女は
「暇なのか」
「いえ、アナタとお話がしたかったので…
平和島静雄さん」
「こんな女に知られてるなんてな…
俺はどこまで有名人になってんだ」
“名前知ってる癖に知らないなんて矛盾してる”
臨也の言葉がふと蘇る
タバコの火を消し
階段に腰をかける
不思議な雰囲気を纏う女は
まるで闇に溶け込むように
妖艶な声で俺に問い続けた
「臨也…とは犬猿の仲だと思いますが
彼は今何をしているのですか?」
頬がひくつく
「あ?てめぇ…俺の前であいつの名を出すたぁ…
死ぬ覚悟できてんのか?」
立ち上がり見下ろす
女はそのまま動こうとしない
ふつふつと沸き上がる怒り
「できるものなら
“殺してください”」
サインが出たかのように
右手が彼女を目指し伸びる
しかしその拳は宙を切ることとなった
――何?
「質問に答えて下さい」
真後ろで声が聞こえ
反射で回し蹴りを決めるのだが避けられ
腕を捕まれる
――こいつ
「化け物か」
「質問に答えていただけたら、その質問に答えます」
「臨也は情報屋をやっている」
「……」
暫くの沈黙の後
馬鹿にしたような笑いが聞こえた
「そうですか」
すっと捕まれていた腕を離される
「質問に答えます
私はアナタの言う通り、化け物ですよ」
長い袖をひらひらとゆらしながら微笑む
――本当に化け物か?
「…まぁ、本当か嘘かは静ちゃんの判断に任します」
「オイ。何さりげなく臨也と同じ呼び方してんだ」
「腐れ縁って切れないのね」
「はぁ?」
「本当、変わらないね2人とも」
――また、だ
悲しそうに微笑む
あの笑顔
俺は知ってる…だけど
――誰なんだ、こいつは
名前を聞こうとしたら
女はいきなり蝶ネクタイをぐいっと引っ張ってきた
「あぁ?」
困惑と怒り混じりの威嚇
「ありがと」
「…」
「また、来ます」
本日二度目の背中をみて気付いた
「――、ッ!?」
今、
唇を奪われた
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