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花枝は力なく絡めた腕を解く。
彼女の凄い所は彼の前では泣かない事だ。
多分、彼が部屋を出てから思い返し、それから涙を流すだろう。
彼は花枝の部屋をでて通りに出た。
チラッと花枝のマンションの階をみると花枝の影があった。
彼は自分が行きたい方向とは逆に歩いた。
花枝がそれを見て、おかしい、そう思ったら追い掛けてきて彼を部屋に呼び戻すだろう。
しかし、花枝は追っては来なかった。
彼の最後の賭け…
彼は卒業をさせて他人に花枝の幸せを委ねる。
彼は卒業をさせ自分自身が花枝を貰い受ける。
彼はこの賭けが前者になった事を痛感しながら夜更けの道を歩いて行った…。
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