幸せ

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仲の良かったクラスの女子に告白されたこと。 それを断ったこと。 その子を傷付けてしまったこと。 自分の何処に魅力があるのか。 そんなことが途切れ途切れのまとまらない言葉になって力なく口からこぼれていく。 話している間、白石はずっと頷きながら聞いてくれていた。 白石の顔があまりに優しくて、不覚にも目頭が熱を帯びた。 「わい、わからへんのや」 「うん」 「好きとか、もわからんし、わいのどこが好きなんかもわからへん」 「うん」 「せやから断った」 「……うん」 「けど、傷付けてしもた」 「そやな」 そこからはもう、言葉にならず、ただ震える拳を握り締め、自分の足元を睨み付ける事しか出来なかった。 そんな自分を見つめてた白石が立ち上がったのは、自分が大分落ち着いて来た時だった。 白石は「けどな」という言葉と共に隣に腰かける。 左半身に白石の体温が伝わってくるのがわかった。 「金ちゃんがしたことは間違ってへんよ」 少し予想外の白石の言葉に、次の言葉を促すように視線を送った。 白石はそれに気づいてか気づかずか、両手を後ろについて天井を見上げながら続きを話す。 「俺はその選択が一番やったと思うで」 依然として天井を見つめている白石。 その横顔からはうまく表情が読み取れない。 「俺な、その子が金ちゃんを好きになったんもわかる気がするな」 「え?」 「テニスをしてる時の金ちゃんキラキラしとるで」 それがもう立派な金ちゃんの魅力やん? と自分の方に顔を向けて目を細めて微笑む。 そんな白石に不思議と目眩がした。 そんな自分の涙腺に追い討ちをかけるように白石はそれにな、と言葉を続ける。
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