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「まったく、一度くらい私より先に来てみてほしいんですけどぉー」
彩が小走りで私のもとへ来れば、カバンからハンドタオルを取出し額の汗を拭う彼女に呆れたように私は言った。
「いやね、電車に乗るまでは超余裕だったんだって!でもさー乗ろうとした電車が超満員でさー、心が折れたってカンジ?」
「はい、言い訳しなーい。今日と言う今日は遅刻女王様に罰ゲームをやっていただきまーす。」
言い訳にしたってもっとマシな言い訳はないのかとさらに呆れつつ、私は陽気な口調で公園のトイレを指差し彩に微笑む。
「…罰ゲームって…トイレ?」
ハンドタオルをカバンに仕舞ながら、私の指差す方へ視線を向ければ首を傾げる彩。
「トイレの花子さんやってきてよっ」
「え?トイ……えーっ古!!しかも地味に嫌!やり方知らないしー」
しかし、これは罰ゲーム。
嫌だ嫌だと言いつつも、この暑さにダルそうにそろそろと公園へ歩き出す彩の背中を軽く後押しする私。
「トイレの入り口まで一緒に行ってやり方教えてあげるっ」
このとき、どうしてこんな罰ゲームを私はやってしまったのだろう。
胡散臭いと鼻で笑ってすぐに公園を立ち去れば良かった?
ううん、違う。きっと私は、また別の場所でトイレの花子さんをやっていた。
きっと、先にノックしたのは「彼女」だったんだ。
私は、愚かにもその返事を友達にさせてしまったのだ。
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