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「ねえ、聞いてるの?」
少し苛ついた口調で話す彼女の唇の左下のほうにはニキビができている。
「聞いてる聞いてる。
それで、秋本のファーストキスは雨に濡らされた思い出なの?」
狭いベッドの上で、話題は何故だかファーストキスの思い出について。
僕の飼い猫のララが二人の間で喉を鳴らす。
「違うよ。
そんなんじゃなくって。
これは奇跡のお話。」
気持ち良さそうに目を閉じているララを胸元に引き寄せて、彼女は笑顔を作り、びっくりした猫は“ニャー”と一声あげた。
外はそろそろ白んでくる時間のはずだけど、僕のカーテンの黒は光を許さない。
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