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「なんで?」
彼女が口を開いた。
やさしくもなければ怒っているようなわけでもない、って感じで。
なんで?
どうしてかって?
「理由なんて無いよ。」
キスしたかったから?
好きだから?
理由があるとすれば、まあそんなところだろう。
でもそんなこと言ったら、なんだかおかしなことになりそうで嫌だった。
角砂糖みたいな言葉で甘い雰囲気を作って、勢いに委せて先に進みたいわけじゃない。
セックスがしたいわけじゃない。
‥‥そりゃあ当然、したくないわけでもないが。
「そっか。
瀬尾くんも男の子なんだね。」
なんだよ、それ。
ファーストキスは何年も経った今でもキラキラな思い出なのに、たった今のキスは、それ?
僕は彼女から目を逸らした。
そして、後悔した。
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