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「本当!?」
ルイの嬉しそうな声が聞こえてくる。
アミルダは小説を覗き窓の鉄格子の隙間から部屋に放り込む。
「ありがとう!」
「研究員が来たらベットの下に隠して下さいね? 本当は駄目なんですから」
「うん、分かった! アミルダと私の秘密ね」
「えぇ、秘密です」
アミルダは自分の頬を触る。
知らずの内に微笑んでいたことに驚いているのだ。
もっと自覚しなければいけない。
自分が会話している相手はいずれ化け物、もしくは兵器になる相手だと。
アミルダはそう自分に言い聞かせた。
「アミルダ?」
「え? あ、はい、なんでしょう?」
考え事をしていた為にルイに声をかけられたことに気付かなかったようだ。
「この本、すごく面白いよ!」
アミルダは驚いた。
アミルダの読んでいた小説は推理小説で、かなり複雑な話だからだ。
読んでる自分でさえも、話を完璧に理解できていない。
「孤児院にいた時にね、院長がよく小説を読ませてくれたの。だから、本は好きなんだ」
「そうなんですか……じゃあ、それが読み終わったら別のを持ってきてあげます」
自分は冷徹にはなれない。
アミルダはつくづくそう思った。
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