◆~親友~後編◆

78/93
前へ
/976ページ
次へ
「ふむ、様子見といったとこだな」 礼拝堂の長い椅子に並んで座る煉、里奈、ヒメにセインはそう告げる。 あの後、泰陽の傷は治療できたものの出血の量が尋常ではなかった為、セインが知り合いの医者へと泰陽を連れて行ってくれたのだ。 現在輸血をし、暫くは安静にした方がいいと帰ってきたセインに言われた。 「ありがとうございます、セインさん。何から何まで……」 煉がそう言うと、セインは珍しく不満そうな表情になる。 「そう思うなら無茶はしないで頂きたいな。少年がいなくなったおかげで我々がどれだけ心配したことか……」 「ごめんなさい……どうしても一人で行きたかったんです。そしたら……」 そして、煉は泰陽に出会った経緯とフィスタの話をみんなに話し始めた。 フィスタはやはり和解を望んでいないことや、泰陽が謝ってくれたことなど。 泰陽が何故傷だらけだったのか分からないままで、何故気絶したルイを連れていたのも未だ不明だ。 今、ルイは奥の部屋で寝かせている。 外傷はないが目を覚ます気配はなさそうだ。 「なんであんなに傷だらけに……」 里奈は先程からそればかり呟いている。 煉も心配だったが、泰陽も同じぐらいずっと心配だったのだろう。 「とにかく少年の友達が目を覚ますまでは詳細は分からぬな。それまでは待つしかないだろう。我もルイのことで聞きたいことがあるしな」 「そうですね」 煉はセインの言葉に頷く。
/976ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3557人が本棚に入れています
本棚に追加