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「ふむ、様子見といったとこだな」
礼拝堂の長い椅子に並んで座る煉、里奈、ヒメにセインはそう告げる。
あの後、泰陽の傷は治療できたものの出血の量が尋常ではなかった為、セインが知り合いの医者へと泰陽を連れて行ってくれたのだ。
現在輸血をし、暫くは安静にした方がいいと帰ってきたセインに言われた。
「ありがとうございます、セインさん。何から何まで……」
煉がそう言うと、セインは珍しく不満そうな表情になる。
「そう思うなら無茶はしないで頂きたいな。少年がいなくなったおかげで我々がどれだけ心配したことか……」
「ごめんなさい……どうしても一人で行きたかったんです。そしたら……」
そして、煉は泰陽に出会った経緯とフィスタの話をみんなに話し始めた。
フィスタはやはり和解を望んでいないことや、泰陽が謝ってくれたことなど。
泰陽が何故傷だらけだったのか分からないままで、何故気絶したルイを連れていたのも未だ不明だ。
今、ルイは奥の部屋で寝かせている。
外傷はないが目を覚ます気配はなさそうだ。
「なんであんなに傷だらけに……」
里奈は先程からそればかり呟いている。
煉も心配だったが、泰陽も同じぐらいずっと心配だったのだろう。
「とにかく少年の友達が目を覚ますまでは詳細は分からぬな。それまでは待つしかないだろう。我もルイのことで聞きたいことがあるしな」
「そうですね」
煉はセインの言葉に頷く。
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