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無理難題を押し付けられてしまったが、簡単に諦められるはずがない。
引き抜かれてしまったが、仲間との思い出が詰まった場所なのだ。
簡単に、はい、そうですか。と言って納得できるはずがない。
後半は、レンへの悪口にも聞こえる校長の話を馬耳東風しながら解決策を考える。
校長は言いたいことを言うだけ言って、レンに退出を命じた。
「失礼しました……」
ドアを閉めて歩き出す。
「いきなり修羅場みたいね」
「優奈……ボクシング部、廃部になるかもしれねぇ」
優奈と呼ばれた少女はレンの幼なじみの神山優奈だ。
薄いピンク色が桜のように視界に映える。
どうやら優奈は盗み聞きしていたらしい。
何も言わなくていいよ、と諭すような視線を送ってくる。
辛い胸の内を察してくれているのだろうか。
「何とかしないとな」
自らを奮い立たせるようにつぶやいた。
言葉をこぼさねば、涙がこぼれそうだったからだ。
廊下を歩く2人の近くにある窓には桜が満開になっている。
桜は祝福するのではなく、レンには嘲笑っているようにも見えた。
だが、涙はこぼせない。
廃部にはさせない、と、逆に決意を固められた。
嘲笑ってくれた桜に感謝したい、と変な感想をもったが。
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