一章:王女の依頼

2/35
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「よく来てくれました、リデッド・イグナール。あなたに依頼です」  煌びやかな装飾で彩られた王室。その奥に気品溢れるドレスを着た少女が、真剣味を帯びた表情でそう言った。  ふんわりした柔らかい感じの印象を受けるこの少女は、大国レイクズの王女である――ロゼ・シャルクライムだ。  眩いほどの金髪は床の絨毯につくほど長く、ひざ元まである真っ白のドレスと相まってよく似合っている。  いかにも、王族のお嬢様と言った風貌をロゼは醸し出している。 「で、今度はどんな依頼で俺を呼びつけたんだ?」  ロゼと向かい合うように、壁に背をもたれ掛けて、俺は急かすように言った。  庶民暮らしの俺にはこの部屋から漂う、堅苦しい貴族の空気が肌に合わない。息苦しく、居心地が悪い。終始ここから出たい衝動に駆られている。  ロゼは俺の気持ちをくんでくれたのか直ぐに口を開いた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!