一章:王女の依頼

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「あれだけいれば俺の出番はないぞ」  ロゼに顔を向けず、俺は中央地帯の方向に視線を向ける。 「数は多いが雑魚ばかりの下位魔獣だ。今、この城に集まっている聖騎士で充分足りる。そんな事視察に行った聖騎士からでも伝わってるだろ?」  中央地帯はその名の通りこのアグラド大陸の中央に位置している。そしてこのロゼ王女が治めている大国レイクズは中央地帯の南側にある。魔獣の位置はだいたいにしか分からないが馬で飛ばせば一日か二日で行けるくらいだ。  魔獣が現れて二日はたったんだ。今の状況を知らないはずは無いと思うが。  俺は返事を聞こうとロゼに顔を向けた。するとロゼは頬を少し朱く染めていた。 「今回の戦いでアステルが聖騎士として初陣するんです」 「あぁ、あの優男か」  アステル・リチャード。元貴族の青年で、ロゼ王女のお気に入りだ。年齢は俺の一つ下でロゼとは同い年。
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