一章:王女の依頼

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 ロゼとアステルは子供頃からの付き合いらしく、王女でありながらロゼはアステルと家族のように仲良くしている。  なるほどな。確かに家族が初めて戦いにでると言うなら心配したりもするんだろう。だがそれは杞憂だろう。 「アステルなら心配しなくてもいいと思うぞ。何回か剣を交えたがあいつは強い。何せ聖剣を持ってるしな」  あいつは並の聖騎士百人分の力を持っている。聖剣の力もだが、アステルの戦いの才能も普通の人間以上だしな。 「それはわかっているんですが、やはり心配になるんですよ。――リデッドだってそうでしょ?」  ロゼは少し顔を綻ばせて言った。俺はその言葉にどう返したらいいか僅かながらに考えて、こう答えた。 「分からないな。俺の家族は小さい頃に皆殺されたから」  俺は気まずくてロゼから視線を窓の外に逸らした。 「え? あ、すいません」  沈黙。しばらく沈黙が続き、どうしようか考えているとドアからノックする音が聞こえた。
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