一章:王女の依頼

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「別に何もしたりしないよ。金さえ貰えればね」  俺がそう言うと、使用人は昼食がのった代車を押してロゼの部屋に入って行った。 「あの使用人、言いたい事だけ言って逃げやがったな」  掴み所がない使用人だな。正直苦手なやつだ。まぁロゼを思う気持ちは本物みたいだし、良いやつなんだろうがな。  そんな事を思いながら俺は階段を降りていって一階を目指した。  俺が一階に着くと、広場に足を向ける。そこには城下町の人達が聖騎士達と話をしていた。  魔獣の出現で心配になった人達だろう。大丈夫なのかとか、助かるなのかとかそんな言葉が聞こえる。しかし、俺が探しているのはこいつらではない。ここで待っておけと言ったんだが……。  俺は辺りを見回すと人と人の隙間から赤い髪がちらっと見えた。  いた。俺は一直線にそいつの元に近づいていった。 「ディアナ」  俺がそいつの前に立って呼ぶと、剣を抱きしめて座り込んでいたそいつは顔を上げた。
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