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「あの―――。
何か私の顔にツイてますか?」
あまりの鬱陶しさに、イラつきながらも、お嬢様口調を絶やさずに、瓶底眼鏡に問い掛けた。
「パイロットということは、葵さんはもしや決戦飛空機の……」
「そうですけど?」
私がそう答えるや否や、男性は周囲が振り向くほどの喚起の声をあげる。
「あ、あの――。
周りの方達にご迷惑ですので……」
ウエイターが慌てて注意を促しにやってきた。
瓶底眼鏡の男性は、席を立ちウエイターや、周囲の人達に平謝りする。
椅子に座っている時は気付かなかったが、背が私より20㎝は低く、チンチクリン……。
如何にも、人数合わせについて来たとしか思えない人物――。
必ず居るよね、こんな人。
「スミマセンでした……。
まさか飛空機パイロットと話せるとは思ってもみなかったもので――」
「いえ、気になさらないでください」
私はさっきの騒動に眉をヒクつかせながらも、柔らかな笑みを崩さないように答える。
男性の名前は、
左近=水無月
(さこん=みなづき)
特殊兵器開発部の博士で、こんなチンチクリンなのに、私と同じ二十歳だった――。
そこから先の展開は、想い出したくもない。 左近は新型兵器や、決戦飛空機の可能性を延々と私に講釈し、周りのメンバーは、厄介払いが出来たと、私達を蚊帳の外に盛り上がっていた。
「結構盛り上がってたんじゃない?」
宿舎に帰る道中マリーナにそう言われた私は、
「あんなチンチクリン――。
絶対あり得ない!!」
私の剣幕にビックリしたマリーナをサッサと置き去りにし、宿舎の部屋へと帰ってふて寝した。
もぉ最悪な一日だった。
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