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日記に書く最後の文を書いた時、私は平和な世で生きていると実感した。
庭のベンチから見える水田。水田の穂が風により揺れ、穂を揺らした風が私を包み込んだせいかもしれない。
同じ様な風景が過去にもあった。思い出した過去は部隊の奴等。そして、あの戦。
戦は終わり、歴史は流れた。だが私は戦が終わったからこそ不安に思う。
後世に伝わる歴史は本当に正しい歴史なのか、と。
何故、私がこの様な不安を抱くかと言うと…今回の戦は2ヶ国間だけの戦ではないと私は知っているからだ。
何故ならば私がいた部隊が深くこの戦に関わってしまっているから。
今、思えば隊長は私達が深く関わる事を予想していたのかもしれない。
あいつらの顔が今でも思い出せる。
カル、サルマン、ラジア、シャン、リース、バラン、サリマ、アムール、ヤガラ兄弟…皆、私を残していった。戦に深く関わってしまったせいで。
私の傍にいてくれる事を決めてくれた人もいた。人生は分からないもんだ。
彼等の想い、彼女等の想い、私の想い…そして俺達の歴史と人生を残したい。そう想い、日記は孫にやることにした。
いつかこの日記を孫が読み、皆の想い、私の想いを感じてくれたら幸いである。
水田の向こうから孫が手を振って私を呼んでいる。
孫の元へ向かおうとベンチから腰をあげ、一歩足を踏み出した時、暖かい風が背中をなでた。
皆の気配がした気がした。
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