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今までの人生の中で一番曖昧な記憶がある。
彼が覚えているのは錆びついた鐘の音色とボロボロに朽ちた“教会”だった。
意識が朦朧とし、強烈な眠気とも脱力感ともいえる異常な感覚に襲われた。
そして、あの薄汚れたローブを着た“老人”。
あの頃まだ中学生になったばかりの彼は、ただただ恐怖に震えた。
ただ震えはあるが、体は金縛りにでもなっているのかピクリとも動かなかった。
―誰か、助けて―
そう言おうとした彼は、しかしその前にローブを着た老人が先に言葉を述べた。
「愚かな子よ………お前は絶望のうちに、残虐なる夢を抱いた………」
今までに聞いたことのないしゃがれた声。しかしその老人は口を動かしているようには見えなかった。
驚く彼の心境を嘲笑うかのようにローブの老人の声が再び聞こえた。
「……お前の夢は、今のお前の力では叶えられん………だが、我がそのための力を与えよう……」
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