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「お前、毎日楽しいか?」
藤川は続ける。
「楽しいないやろ。それは夢も目標もないからや! 俺と一緒にデッカイ夢見ようぜ!!」
「ちょ、ちょお待ちぃな」
俺は両手を上下させて、藤川を宥める。
「突然どないしたん? ほんで、なんでまたお笑いなん?」
「何か持ってると思うねん」
藤川が遠くを見ながら、言う。
「誰が?」と、俺は首を巡らせる。
「お前や」と藤川が右腕を俺の方へ真っ直ぐ伸ばす。脚同様、藤川は腕も長い。
「お前のなんかオモロイ、ずんぐりむっくりした体型、規格外のでかい頭に坊主頭、決して男前ではないけど、鼻ぺちゃな親しみを感じる顔」
「ちょっと待てや!」
俺は大きな声で藤川の言葉を止めた。
「悪口やんけ! なんや、自分はちょっと背ぇ高くて、男前に生まれてきたからって」
「とにかくお前は」
藤川が俺の両肩を掴む。
「笑いの神に愛されとんのや。お笑いをやる為に生まれてきたんや」
「大袈裟な」と、俺は吐き捨てる。
「大袈裟と違う!」
藤川が唾を飛ばす。それが俺の鼻先に当たり、少し嫌だな、と感じた。
「前田、お前は生まれてきた時から、人を笑わせるんが、使命や」
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