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「藤川、わかったよ」
藤川は起き上がり、
「ホンマに!」と、目尻を裂く。
俺は顎を小さく引いた。
「人生大博打のつもりでやってみよか」
「やったー!」
立ち上がった藤川が拳を夜空に突き上げる。
「さすが前田や! やったろうぜ! 俺とお前でお笑い界の頂点目指そうな! 大丈夫、絶対に前田は笑いの神に愛されとる」
テンションの高い藤川を見ながら、俺は苦笑した。藤川とコンビを組んでお笑い芸人。遊びの延長。半分、そんな気持ちだ。
ヒュゥーンと、か細い音がしたのは、その時だった。
「イヤッホー」とハシャグ藤川の後頭部に何かが直撃した。
藤川は「ぐえっ」と、奇妙な声を出し、頭を押さえて、うずくまる。
藤川の傍らに何かが落ちている。俺はそれを拾った。拾い上げたそれは、ロケット花火だった。
「タダシ、どこ向けて撃ってんねん。人居ったら危ないやん」
少し離れた公園から若い男の声が聞こえる。
「大丈夫やって。あっち線路やし、こんな夜中やで」
深夜1時。離れた公園からロケット花火が飛んできて後頭部直撃。ミラクルだ。
「藤川」俺はロケット花火を眺めながら、言う。「お前の方が笑いの神に愛されてんちゃう」
藤川が顔を上げて、照れ臭そうに微笑んだ。
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