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「よしっ、上田行くぞ、ほらっ。」
差し出した手。
「なんで手?」
「だってさ走ってる途中に上田に転ばれたら俺のせいにすんだろ?
それはやだもん。」
「なんだよそれ(笑)」
「だってそうだろ?」
「…まぁそうだけどさ。」
「な(笑)?ほれっ。」
再び差し出した手。
「ん。」
繋がれた二人の手と手。
「ふはっ」「ぐふっ」
なんだか可笑しくて二人、笑った。
「なんかさ、中丸の指って細いね。」
「上田って意外に手ゴツゴツなんだな。」
「うっせ。」
「よしっ、行くぞ。」
下駄箱から一気に校門へ走り出す。
「ちょっ、中丸っ!こけるっっ。」
後ろで上田がなんか叫んでたけど無視して
左手にカバン、右手に上田の手を握って全速力で駅を目指し、
土砂降りの雨の中を走り抜ける。
――――――
「なか、まるっ…早過ぎだからっ」
ハァハァと息を切らしてる上田と、
「ごめん、ごめん(笑)」
少し息を切らしている俺。
無事駅には着いたけど、
服もびしょびしょなら髪もびしょびしょ。
全体びしょびしょで冷たい。
「風邪引きそうなんだけど。」
上田がそう言う。
でもなんでだろう…。
身体は確かに冷たいけど、
心と…
上田と繋がれた手だけは温かい。
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