碧眼ノ鎮魂歌

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彼の『鬼』はそうして覚醒した。 でも 本当に、そう? 本当に真っ白であるなら、そんな染みなど塗り潰してしまえばいい。 本当に強く真っ直ぐであるなら、曲がることすらあるはずがない。 そして 光りに影ができるのは、それを遮るモノがあったからにほかならない。 そうでないというのなら その白さも その強さも その輝きも 全ては悲しく愚かな偽りではないのだろうか。 この世を嘆いたからなどと、そんなものはほんの小さなきっかけにすぎない。 「貴方は己の弱い部分を認めることができなくて、苦しみに堪えられず自らの『鬼』の覚醒を許したのよっ…」 もはやその濁った瞳に私のことなんて映らないだろう。 ― 僕はね、皆が幸せな世界なんてそんな贅沢なモノを望んでるんじゃないんだ。ただ、皆が不幸でない世界であってほしいだけなんだよ… ― ねぇ義兄さん…義兄さんは昔そう優しい顔で言ってたよね? 例え、綺麗言でも… あのときの義兄さんは輝いてたよ? 「貴方は私の瞳が碧いのは何故だかわかる?」 ねぇ義兄さん…己の手を汚し骸を積み重ね血で塗り固めた地にかつて貴方が望んだ世界は成りますか? 今、『鬼』に喰われた貴方の心に、かつて貴方が望んだ世界は、在りますか? 多分もう… 答えすら返らないね―…。  
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