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ついさっきまで絵を描いていたから、服や顔には絵の具がついている。髪はボサボサで伸び放題。美容院なんて、いつ行ったかなんて、もう覚えてもいない。水色のTシャツ、長いジャンパースカート、履きつぶしているスニーカー。通り過ぎる人達はみんな、都萌を見てクスクス笑っている。自分でも、お世辞にも綺麗だとは言い難い。顔は化粧もしていないスッピンだ。しかも、まだ体は絵の具臭い。
都萌はガラスに映る自分の前髪の寝癖に気付いて、苦笑した。店内にいる販売員の内の一人は、清楚な感じの制服を着ていてスタイルもいい。輝くほど綺麗な笑顔で接客をしている。都萌は溜め息をつきながら、そんな店員を見ていた。
「きれいな人。…それに比べて、あたしって…きたなぁい…」
小さく独り言を言うと、突然、ガラスに映る都萌の隣に、見知らぬ若い男が映り、ガラス越しに都萌を見つめた。
「君だってそれなりの格好をしたら、それなりに綺麗になれるよ」
彼はにっこりと微笑みながらそう言うと、都萌は驚いて横を向いて彼を見つめた。
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