第1章 雨のいたずら

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* 彼の名前は、坂本和依。23才。 2年前までは、フランスでワインの修業をして、今では青山にあるレストランの店長兼ソムリエとして働いている。元々は祖父がオーナー兼店長として働いていたが、祖父が他界し、その後を和依と弟が連名で引き継いだ。だが和依と弟もまだ若いため、祖母の計らいで祖父の生前から世話になっているスポンサーがオーナーとなっている。 和依の恋人、牧原水也美。 高校からの付き合いで一緒にフランスに修業に付き添い、フランス料理を学んだ。二人は人も羨むカップルだ。 そして、秋乃都萌。 絵を描くことが三度の飯より大好きで、今年二十歳になった。昼間はカフェで働いていて、夜も居酒屋で時々働いている。美大はお金もなくて、受験にも失敗して、…諦めた。 好きな時に好きな絵を描く。それだけで、いい。 そう思うようになった。そんな自由な毎日に、今は満足していた。 * 都萌は、長い髪を後ろで一つに束ね、恵比寿にあるカフェ・サンタムールの厨房で皿洗いをしていた。泡のたっぷりついたスポンジで皿を洗いながら、都萌は先日会った若い男のことを思い返していた。顔は、まるで雑誌から抜け出たような整った顔立ち。
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