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 何処から現れたのか、時雨の目の前に一振りの剣が落ちて来た。  その剣は重力に従い落ちながら黒の手をいともあっさり切った。  そのままの勢いで床に刺さる。  その剣は青く透き通った、まるでクリスタルで出来た様な洋風の剣だった。 …… ギャァァ!! ……  黒が叫び声を上げた。  切口から血と思われる黒い液体が落ちている。  時雨は慌てて、剣を引き抜くと黒に向かいあった。  黒はその場で天井に向かって吠えている。  時雨の体が輝き出す。  蒼いオーラの様な物が時雨を覆っている。 ――何だ? 体が軽くなった。  時雨の本能が体に指示を出し始めた。  目の前にかざすように剣を構えた。  刀芯に自分の顔を写す。  何処から現れたのか、黒の回りを水が回り出す。  水は結界でも張るようにスピードを上げていく。 ―― チャキッ ――  刄を相手に向けた。  水が天井を突き破り一気に舞い上がる。 ―― ダイダルウェーブ!  時雨は剣を薙払う様に横に振った。  舞い上がった水は滝のごとく、黒に襲いかかる。 …… ドドドドドドドドド ……  小さく黒の悲鳴が聞こえたが水の音に掻き消された。 ………………  沈黙が流れた。  時雨は振り終えた体制のままただただ沈黙が流れた。  水は落ちた時とは比べ物にならない程減ったがある程度の水が残った。  水柱が消えた時、中に黒はいなかった。  もしいても粉々に砕け散っていただろう。  それほどまでに凄まじい威力だった。  黒がいた部分の床がそれを物語っている。  時雨もその場に倒れた。 「はぁ、はぁ……体が……動か……ねぇ……」  時雨の体はついさっきまで、死後硬直によって固まっていたのだ。  それを無理に動かせば当然そうなる。 「くそ……う……」  その手にはカードがしっかりと握られていた。 〔さっきの水柱は何だ?〕  誰かの声が聞こえる。 〔おい! 誰か倒れてるぞ!?〕  先程の声の主が言った。 〔まさか、まだ生き残りでしょうかね?〕  先程とは声の質が違った。  先程より、いくらか大人びている。 ――こいつらは何を言っているんだ? 〔嘘だろ! こいつ、ルーラーだ!?〕  始めの声が言った。  声から驚きが感じられる。  しかし、そこまでが時雨の限界だった。 ――今日、気絶してばっかりだな……  その声を最後に時雨は意識を失った。 〔とにかく、ここは危ないですね……。家に運びましょう!!〕 声が言った。
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