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明らかに異常な気配に満ちている。
村全体から人の姿だけが消えたように感じる。
ガラス窓の桟を見ても厚い埃を被っているわけではない。
ガラスも掃除されているのか綺麗なままだ。
これだったら先程の駅や交番の方が汚れているだろう。
色々といっぱしのゴーストタウンとは違う場所が多い。
「いったいどうなって……」
――カタン――
時雨が愚痴をこぼそうとすると後ろの方で音がした。
時雨は慌てて振り向く。
旅行鞄の中身が軽く音をたてた。
「なっ!? 何だよあれ……」
視線の先……つまり、後ろ約300m程の場所に明らかに地球上生物では無い生き物がいた。
ボロボロにも見える皮の様な羽。
顔は無く全身が黒一色で統一されて体は骨と皮だけで出来ている。
もし、悪魔と死神を足して2で割ったらああなるのだろう。
地球上最大繁殖生物人類との共通点は身長くらいだろうか。
「こんな事って……」
考える前に黒い生物(たぶん)は前屈みになっる。
「ま……さ……か……」
黒い生物はゆっくりと足を曲げ、羽を広げる。
時雨の頬を嫌な汗が流れた。
時雨の手から旅行鞄が落ちる。
……ドンッ……
黒い生命体が凄まじい音と共に砂ぼこりを巻き上げ突進して来た。
「嘘だろ~!!」
時雨は猛ダッシュで逃げた。
時雨の運動能力は中の上。
出来ない方では決して無いが出来るわけでも無い。
「何であんなのがいるんだよ~!!」
黒い生物は逃がさないと言いたいのだろう。
手を広げながら、もうスピードで近づいてくる。
時々、家の壁に手が当たるがその瞬間に壁は砕け散る。
それらの情報が捕まってはいけないと時雨の頭に警報を鳴らす。
しかし、気持ちとは裏腹に、時雨は必死に逃げているにも関わらず、あっという間に差は縮まる。
「ウォォォ!!」
時雨は叫び横道に飛び込んだ。
間一髪のところで黒色が通り過ぎる。
少し、靴にかすった。
「痛っ……!」
右足に痛みが走る。
少し、すりむいたようだ。
……ドガッ!!……ガシャン!!……ガラガラ……
しかし、それに気づく前に遥か彼方で凄まじい轟音が挙がった。 時雨からは見えない場所に位置するが、ぶつかった家々は粉々に砕け散りまるで、戦争でもあったかのようだ。
残骸の続く距離から察して、かなりのものだろう。
煙が工場区のごとくもくもくと上がる。
中でゆっくりと影が動いた。
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