旅立ちは突然に

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「ジリリリリリ・・・パチン。」  無意識に目覚まし時計に手を伸ばし、ポン。  瞬きを何回かしてやっとその文字盤に目を向ける。  時計の針はAM5:30を表示中。 よし、いつも通り。  いつもと変わらない朝。 カーテンを開けると 今日はすこぶる快晴らしく、 暖かな朝日がさんさんと 私の部屋へ流れ込んでくる。 「うーん、今日も良い天気だ♪」  小さく伸びをするといつものように軽くラジオ体操もどきをし、 着替えを済ませる。  1階にあるダイニングルームへと足を運んでドアをガチャリ。  開けた瞬間にパンの焼ける香ばしい匂いと コーヒーの香りが同時に私の鼻をくすぐる。 テーブルの方を見るとトースト・コーヒー・目玉焼きにサラダ付きという予想通りの、 だけど朝食を抜かすことが多い現代の家庭にしては 珍しいくらいたくさんの品数が並べられていた。 「あぁ、智菜。おはよう。」  声のした方を見ると、いつものごとくキッチンにて お弁当の準備をしている母さんの姿があった。 「おはよう、母さん。」 「朝の分の餌ならテーブルの上に置いてあるから、 覚めないうちにお食べ。」 「……」  はぁ、またか。 「母さん。」 「あらやだ、つい……。」 ちゃめっ気たっぷりに舌をチロリと見せる母親に、密かにため息。  けっして彼女は私が嫌いで言ったわけじゃない。 詳しいことは知らないけど生まれてこのかた16年間会ったことがない ……私にとってお祖母さんにあたる人によって、猫として育てられたんだとか。
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