旅立ちは突然に

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まぁ、そんなことはおいといて。話を元に戻そうか。  お皿の上に盛られていたものをさっさと平らげ、 洗面所へ行って身なりを整えた。  ここまではいつもの朝となんら変わらない。  たぶん、私に対する運命のいたずらは あのゴミ袋を見つけた時から始まっていたんだと思う。  「支度も終わったことだし、さぁ学校へ行くぞ。」 と勇んで玄関に向かった私の目に飛び込んできたのは、 存在感をこれでもかと主張せんばかりに大きい物体。  白いし、この結び方からして生ゴミだろうと思いながら聞いてみる。 「母さーん、玄関にあるこの袋・・・。」  言い終えるまもなく彼女は素っ頓狂な叫び声を上げ、 私の目の前に現れた。  この間、約5秒。  彼女がいたはずのキッチンからダイニング・リビングを通って ここまで来るにはありえない速さだ。  そしてすぐさまへたりこむ。 「やっちゃった・・・。昨日、すぐ出せるようにって ここに置いといたんだっけ・・・。 どうしよう、今からこれ出しに行ってたら、 お弁当が間に合わなくなっちゃう・・・。」  我が家は両親と私、それにませた中学3年と やんちゃな小学5年の弟達に 可愛い盛りの3歳の妹の総勢6人家族。  しかも1日中家にいる母さんを除いて、 全員お弁当が必要だったりする。  たかがお弁当と侮るなかれ。  分量・栄養バランス・彩りを考えて作り、 なおかつそれを包んで渡すという作業までしなければならない。  1個や2個ならそれなりに余裕もあるだろうが、 5個ともなると時間との戦い。  ある意味、精神力勝負となってくる。 時間がある時は私も手伝ったりするんだけど、 今はそれだけの時間がない。  「じゃあ、ゴミぐらい出してやったらどうだ」と思うでしょ?  だけどゴミ捨て場は駅に向かう道と反対の方向、 しかも10m先にある。  いつも通り時間ギリギリまで寝ていた私にはできない相談だ。
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