旅立ちは突然に

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 それを頭の中で確認し、ドアの方へと直る。  後ろを振り向けば母さんがすごくウルウルさせた目で こっちを向いていることだろう。  それを見ちゃったら終わりだ。 (動物ならなんの躊躇もなく近づくけど。)  電車にギリギリ間に合う時間帯、しかも自分の母親を相手に そんなことを引き受けようとする人はいない。  こういう時には逃げ出すのが1番・・・。  ガシッ! 「チーちゃぁん……!」  なんだけど、そうはいかないみたい。 「何?」 「お願い、これ出してきてくれない?」  やっぱり・・・。 「やだ。だって私もう行かなくちゃ、 電車に間に合わなくなっちゃうよ。」 「すぐそこなんだからいいじゃな~い! それに、その電車に間に合わなかったとしても 次のがあるんだから・・・。」 「大丈夫じゃないの!!母さんはあんまりこの町・・・いや。 村から出たことがないからわからないだろうけど、 ラッシュ時間でさえ1時間に1本しかないんだから!」  興奮して言い切った次の瞬間、 我に返って余計に墓穴を掘ったことに気づく。 母さんの目が、さっきよりも水気が多くなってきた。 (保湿成分は肌だけで十分だよ・・・。) 「あー、もう・・・泣かないの。」 「だってぇ・・・。」  あーぁ、口から出るもの以外全部出ちゃってる・・・。 「わかった、わかった。出してくるから泣かないで・・・ね?」  そのとたん、彼女の顔が晴れて。 「ホント~♪うれし~、ありがとー。じゃ、これよろしくねーV」 と、袋を突き出してきた。 (こ、この人は・・・!)
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