1人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
朝起きた時とは全く違う部屋の空気。
足元に散乱していた衣類やゴミたちは一時的に部屋の隅に追いやられ
閉めきっていたカーテンは己の役割を放棄。
薄暗い一室に久々の朝日が降り注いでいた。
「うあ゙ぁぁぁぁぁ、死ぬぅ゙ぅぅぅ」
護は今にも死にそうな声で唸る。
もしや、長期にわたって日の光を拒み続けた結果自分は知らないうちに吸血鬼の仲間入りを果たしてしまったのではないか?
そう、思えてしまうほど今の護に日の光は致命的だった。
「もう、大袈裟過ぎ。」
少しは太陽の光を浴びたほうがいい、と奏は言いながら
何やら小さめのコンビニ袋を差し出してきた。
「あんたのことだからまともにご飯食べてないんでしょ?」
渡された袋の中を覗く。
袋の中には、ツナマヨと梅のおにぎりが二つ。
そして、小さいペットボトルのお茶が入っていた。
「あ、ありがとな……」
護はかろうじて聞き取れるであろう声で奏に感謝した。
「じゃあ、時間もないし早く着替えて!」
「えっ?」
「えっ?、じゃない!今日私が何のためにここに来たと思っているの!?」
あぁ、やっぱりそういう流れになりますか、と護。
今日、奏が護の元に来たのは、彼を学校に連れて行く為だ。
護は思う。
目の前の女の子は昔から変わっていない。
相も変わらずお節介だ。
最初のコメントを投稿しよう!