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少年は、暗く、しかし淡い光を放つ無数のそれを散りばめた幻想的な空を眺め思った。
何故、この手はあれに届かないのか―――
何故、この手であれを掴めないのかと―――。
あの空の………その遥か彼方に散りばめられた星々はあまりに遠く、伸ばす手は空を掴むだけ。
期待したわけではない。
いくらあれをつかもうとしても掴めないのはとっくに理解している。
自分にできることは、もうとっくに試し尽くした。
初めは小さな段差から。
次は自宅のベランダ。
その次は学校の各階からその身を投げ出し、あの高い空へと手を伸ばした。
次は……次は――と、ありとあらゆる可能性を信じた。
決して可能性は0ではないと愚直に
そして、純粋にそれをこの手で掴もうと――
言葉道理、死力を尽くした。
それなのに何故?
何故、あれは掴めない?
それは、簡単なことだ。最初からあれはお前しか見えていない。
誰かが言った。
あれはお前の幻覚。妄想でしかない。
誰かが言った。
いい加減気づけ異常者
と、名前も素性も何も知らない誰かに
そう言われた気がした。
少年は夜空に散りばめられた宝石のような星々と踊るように漂う《あれ》を見ながら苦笑する。
あぁ、
確かに異常だと。
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