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考えてみれば自分を信じてくれる人間なんて初めからいなかった。
だってそうだろ?
あれが少年の造り出した妄想であり幻覚だとすれば誰が信じてくれる?
他者の常識から外れればそれは例外なく異常だ。
少年は手を伸ばせば届くのではないかと錯覚してしまいそうなほど近くにある《あれ》を見ながら
今度ははっきりと笑った。
異常者でけっこうだ。
常識なんて退屈でつまらない。
目の前で時には衝突し、時には踊るように、時には寄り添うように
まるで意志があるように漂う
その、淡く儚くも確かな光を放つ発光体を見ながら
少年は自分の胸の高鳴りを押さえられずにいる。
眼前に広がる幻想的な非日常。
それを追い求めて何が悪い?
現実?妄想?
そんなことは関係ない。
現実なら、一生忘れられない記憶としてを。
妄想でも。死ぬまで残る鮮明な記憶として。
今この目に映る光たちを。
この素晴らしく幻想的な光景を
生涯忘れないように―――
「今日こそお前らを掴んでやる!!」
少年は気合いをいれると
力の限り助走をつけ―――
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