1人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
「こんな貴重な薬草をこんなに分けてもらい本当にすまない。」
「いえ、俺は全然。」
俺は、何もしていない。
今回、この花を集めていたのは紛れもなくサーシャなのだ。
「じゃあ、先生。私達はそろそろ帰るのですよぉ」
「あぁ、そうだな。時間も、もう遅い。気を付けて帰りなさい。」
こうして、俺たちは診療所を後にした。
帰り道、サーシャに訊きたいことが色々とあった護だが何も言わずただ彼女の後ろを付いて歩いた。
日が落ちたせいで辺りはすっかり暗くなってしまい等間隔で置かれた街灯に淡い光が灯る。
丁度、昼間の広場に戻ってきた時サーシャは立ち止まり言った。
「護は何にも訊かないのですね。」
今までとは違う彼女の声音。
振り返らず話しかけてきた彼女は恐らく、今までみたいに笑顔ではないのだろう。
「えーと、訊きたいことはあったんだけどさ。俺って人と話すの苦手じゃん?だからタイミングが分からなかったって言うか………その。」
「護は正直なのです。」
それだけ言うとサーシャはまた歩き出す
広場の北側。
あの大きな城に向かっているみたいだ。
「あれ?城にもなにか用事があるの?」
「違うのですよぉ護。あれが私の家なのです。」
手短にそう伝える彼女。
護は驚きはしたが
「そうなんだ。」
ただ、それだけ言って城へ向かう彼女の後を追った。
最初のコメントを投稿しよう!